さつまいもコラム
さつまいもの甘さについて
甘藷研究所
今年もさつまいもの収穫シーズンが終わりを迎え、貯蔵庫等での貯蔵が始まっています。
前回の甘藷研究所のコラムでは甘さのもととなる「でんぷん」について触れましたが、今回は「糖」について触れていきたいと思います。
さつまいもの甘さのヒミツ
収穫直後のさつまいもは、スイーツのような甘さよりも、さつまいもらしい風味を強く感じられるかと思います。収穫直後のさつまいもはどのようにして甘く変化していくのでしょうか?
さつまいもの甘さには、スクロース(ショ糖)、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、マルトース(麦芽糖)と呼ばれる4種類の糖が関係しています。これら4種類の糖は、栽培中にさつまいもが蓄積したでんぷんをもとにつくられます。
でんぷんはどうやって糖に変化するの?
生のさつまいも内のでんぷんが糖に変わる過程は二つあります。
①貯蔵中にでんぷんが糖に変化する過程
収穫直後のさつまいもの中にはあまり糖は含まれていませんが、貯蔵することででんぷんが糖に変化し、スクロース(ショ糖)がつくられていきます。
さらに、つくられたスクロースをもとに、少量ですがグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)がつくられ、さつまいもの中には3種類の糖が蓄積されます。
十分に貯蔵することで、でんぷんから糖への変化が進み、より甘みが増します。
②焼く、蒸すなどの加熱調理によりでんぷんが糖に変化する過程
加熱することで糊化したでんぷんに酵素(β-アミラーゼ)が働き、マルトース(麦芽糖)がつくられます。
このように、貯蔵によって生のさつまいも内で増えたスクロース(ショ糖)などに、加熱調理することでつくられるマルトース(麦芽糖)が加わり、さつまいもはスイーツのような甘さになるのです。
品種により程度は様々ですが、さつまいもは貯蔵により肉質や甘さ、風味が変化します。下の写真のように、焼き芋にした場合にも見た目がかなり違っていることが分かりますね。
ぜひ収穫直後のさつまいも、長く貯蔵したさつまいもなど、季節によるさつまいもの違いを楽しんでみてください!
いも知識🍠
さつまいもの甘さを表す指標として、屈折糖度計を利用して測定する「糖度(Brix、ブリックス)」があります。この値は、可溶性固形分(液体に溶けている成分)の濃度を示しており、水溶液の濃度によって光の屈折率が異なることを利用しています。果物や野菜などの甘さの指標として利用され、さつまいもでも、含まれる糖の量や食べたときに感じる甘さとBrix値との間には比較的高い相関があるため、甘さを示す指標としています。
県などの試験研究機関において、加熱したさつまいもの糖度を測定する時は、「いも中央部分を輪切りにし、皮を除きペースト状にしたものに3倍量の水を加え撹拌し、ろ過した液の測定値に4を乗じた値」を用いており、同一の測定方法で得られた数値で糖度の比較をしています。
もちろん私たち甘藷研究所も、焼き芋の糖度を測定する場合は、県などの試験研究機関と同様の手法を用いて測定しています!
参考:
一般社団法人いも類振興会(2010). 『サツマイモ事典』p.93-94
https://imoshin.or.jp/wp-content/uploads/sp-encyclopedia-all.pdf
片山健二(2019).「焼きいもの甘さの秘密」『化学と教育』67巻7号 p.318-319
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/67/7/67_318/_pdf
中村善行(2020). 「サツマイモの甘さに関わる糖質成分」『日本食品化学工学会誌』67巻9号 p.305-314
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/67/9/67_305/_pdf
一般社団法人いも類振興会(2020). 「サツマイモにおける蒸しいもの甘さの簡易推定方法」『いも類振興情報』145号 p.24-29
https://imoshin.or.jp/imoshin-viewer/pdf/145024.pdf